昨日は「税理士の署名」というタイトルでしたが、
反響があったので、ついでに法人税申告書に記載する
「代表者の自署押印」について記しておきます。
法人税の申告書:代表者は自署?
法人の代表者(=通常は代表取締役)に自署・押印をしてもらうのは、気が引ける作業です。
一応、「自署」ですので、手書きしてもらわなければなりません。
ですが、すでに印刷されていたり、ゴム印を使ったりしませんか?
税理士として見過ごせない?とやり直しを命じることは…..
なかなか難しいと思います。
昨日に引き続き法令を確認しておきましょう。
法人税法の確認
代表者の自署押印は151条に記載されています。
(代表者等の自署押印)
第151条 法人の提出する法人税申告書等(—略—)には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者(当該者が法人である場合には、当該者の職務を行うべき者)が自署し、自己の印を押さなければならない。
(—略—)
やはり、自署・押印が必要と書いてあります。
自署とは?
「自署」は、自身で署名することですので、代表者が自らの手で申告書に氏名を書かなければいけません。
やむを得ず代表者名入りのゴム印を押したり、予めワープロで印刷されているケースもあるかもしれませんが、これらによる氏名の記載は「記名」であり、自署ではありません。
押印とは?
印鑑を押すことですが、法人税の申告書に押す印鑑はどのような印鑑でしょうか?
法人税法では「自己の印」と書かれていますので、申告書に署名をした代表者個人の印鑑のことです。
実印でなく、認印でもOKです。
実際には、会社の代表者が押印する印鑑であるとして、会社の代表印(●●株式会社代表取締役之印など)押印していませんか?
会社の代表印も「自己の印」に含まれるのかもしれませんが、本来は代表者個人の印鑑を押すことになっています。
とはいうものの…..
絶対に自署・押印が必要か?と聞かれると、微妙です。
同条の5項に以下のように規定されています。
“前各項の規定による自署及び押印の有無は、法人税申告書の提出による申告の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。”
「税理士の署名」補足
ちなみに、税理士法33条4項にも同じような規定があり、
“第一項又は第二項の規定による署名押印の有無は、当該書類の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。”
となっています。
ですので、署名があろうとなかろうと、また、自署であろうと押印がなかろうと、申告書は有効なのです。
ついでに地方税法
(法人の代表者等の自署及び押印の義務)
第72条の35 申告書及び修正申告書には、法人の代表者(—略—)が自署し、かつ、自己の印を押さなければならない。
(—略—)
そして同条5項で、
“第1項から第3項までの規定による自署及び押印の有無は、(—略—)申告の効力に影響を及ぼすものてはない。”
となっています。
さらに罰則規定もあります!
法人税法 第161条
(代表者等の自署押印)の規定(—略—)に違反した者(—略—)は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
地方税法 第72条の36
(法人の代表者等の自署及び押印の義務違反に関する罪)
(—略—)
1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。但し、情状に因り、その刑を免除することができる。
税理士のひとりごと
自署・押印をしないだけで、罰則…
怖いですね。
皆さん、自署・押印、お願いします!!
が、昨日も書きましたが、今や電子申告です。
「自署」に関する法令は、いつまで生き残るのでしょうか?
法人の代表者が1年間の成績に自ら自署・押印をする。
そこで、自らの責任を再確認する。
こういう文化は残してもいいのではないかと思います。