相続税改正まとめ(平成25年改正)

■相続税・課税ベースの見直し 【平成27年1月1日より適用】

現行 改正案
基礎控除 5,000万円
+1,000万円×法定相続人の数
3,000万円
+600万円
×法定相続人の数

 

■相続税・税率構造の見直し 【平成27年1月1日より適用】

現行 改正案
課税財産 税率 控除額 課税財産 税率 控除額
1,000万円以下 10% 1,000万円以下 10%
1,000万円超3,000万円以下 15% 50万円 1,000万円超3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超5,000万円以下 20% 200万円 3,000万円超5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超1億円以下 30% 700万円 5,000万円超1億円以下 30% 700万円
1億円超3億円以下 40% 1,700万円 1億円超2億円以下 40% 1,700万円
3億円超 50% 4,700万円 2億円超3億円以下 45% 2,700万円
3億円超6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

 

■贈与税・税率構造の見直し 【平成27年1月1日より適用】

①20歳以上の者が直系尊属(両親,祖父母,曾祖父母)から贈与を受けた財産に係る贈与税の税率構造

現行 改正案
課税財産 税率 控除額 課税財産 税率 控除額
200万円以下 10% 200万円以下 10%
200万円超300万円以下 15% 10万円 200万円超400万円以下 15% 10万円
300万円超400万円以下 20% 25万円 400万円超600万円以下 20% 30万円
400万円超600万円以下 30% 65万円 600万円超1,000万円以下 30% 90万円
600万円超1,000万円以下 40% 125万円 1,000万円超1,500万円以下 40% 190万円
1,000万円超 50% 225万円 1,500万円超3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

②上記以外の贈与財産に係る贈与税の税率構造

現行 改正案
課税財産 税率 控除額 課税財産 税率 控除額
200万円以下 10% 200万円以下 10%
200万円超300万円以下 15% 10万円 200万円超300万円以下 15% 10万円
300万円超400万円以下 20% 25万円 300万円超400万円以下 20% 25万円
400万円超600万円以下 30% 65万円 400万円超600万円以下 30% 65万円
600万円超1,000万円以下 40% 125万円 600万円超1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超 50% 225万円 1,000万円超1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

 

■小規模宅地等の特例の拡大

【①②は平成27年1月1日より適用,③④については平成26年1月1日より適用】

①特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積について現行の240から330まで拡大する。

②特例の対象として選択する宅地等の全てが特定事業用宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能とする。

<税理士の解説>
 小規模宅地等の特例とは、相続人が相続した自宅や会社の土地・建物などを相続税の支払いのために手放さないですむように、一定の条件を満たず場合、80%減額という大幅な相続税の評価減を受けられる制度です。
 例えば、相続税評価額が1億円であった土地もこの特例を受けると80%減額を受けた2,000万円で相続税が計算できることになります。
 改正前は要件さえ満たせば、240までの居住用宅地について相続税評価を80%減額できました。それが面積について今回330まで拡大。また会社や工場として使っている事業用宅地については400まで80%減額が可能となりました。
 また、改正前は居住用宅地240と事業用宅地400の両方を限度一杯使うことはできず、両方合わせて400までの適用でしたが、今回の改正により併用が認められ、330と400を合計した730まで80%減額できることとなりました。
 改正前は相続人が奥さんとお子さん2名の場合、相続財産が8,000万円以下なら相続税はかかりませんでしたが、改正により基礎控除が4割カットされ相続財産が4,800万円以下でなければ相続税が発生することになります。都心部など地価の高いところに土地を持っている方ではこの小規模宅地特例を使えるか使えないかによって、払うべき相続税額に大きな違いが出てきます。使えずに納税資金がなければ最悪、自宅を手放さなければならないということにもなりかねません。

③老人ホーム入所の要件緩和

 小規模宅地の特例は、被相続人と“同居”していたことが前提となります。
したがって、被相続人が老人ホームに入所していたことにより、被相続人が居住しなくなった家屋の敷地は、現行は、以下の4つが要件でした。

  1. 介護が必要なために入所
  2. 入所後も自宅を他人に使わせていない
  3. いつ戻ってきてもいいように自宅を維持管理している
  4. ホームの所有権や終身利用権を取得していない

しかし、改正後は、

  1. 被相続人に介護が必要なため入所したものであること
  2. 貸付などの用途に供されていないこと

の2つ要件を満たせば、相続開始直前に被相続人が居住していたものとして、特例の適用が可能となります。
 政令では、被相続人がその建物に居住していない場合でも特例が適用される「被相続人が居住することができない事由」を規定しており、それは、介護保険法の要介護認定または要支援認定を受けていた被相続人が、以下のような所に入居又は入所していたこととしています。

  • 老人福祉法に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム
  • 介護保険法に規定する介護老人保健施設
  • 高齢者の居住の安定確保に関する法律に規定するサービス付き高齢者向け住宅、に入居又は入所
  • 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に規定する障害支援区分の認定を受けていた被相続人が、障害者支援施設または共同生活援助を行う住居

④二世帯住宅の要件緩和

 前述のように、小規模宅地の特例は「同居」が前提となっています。
 したがって、現行、二世帯住宅は玄関などを別々にし、建物内部で行き来ができないような構造では、同居していたものとは認められず、特例の適用はできませんでした。
 しかし、改正後は、内部で行き来ができるか否かにかかわらず、同居しているものとして特例適用が可能となります。
 政令では、被相続人が居住していた一棟の建物が、マンションの場合は被相続人が居住していた部分、それ以外の場合は被相続人または被相続人の親族が居住していた部分が特例の適用対象となると規定しています。具体的に書くと、分譲のマンションで区分所有の登記、または、被相続人とその親族が別々の部屋に居住しているケースや、いわゆる二世帯住宅で区分所有の登記がされているケースで、被相続人が居住していた部分が特例の適用対象となり、それ以外の二世帯住宅の場合は、玄関が別で内部で行き来ができない構造上の区分があっても、被相続人または被相続人の親族が居住していた部分が特例の適用対象となります。

<税理士の目>
 小規模宅地等の特例の適用要件緩和といわれていますが、落とし穴があるのではないでしょうか?
 それは上記のように区分所有の登記がされているケースです。
例えば二世帯住宅を建てて、一階を父親、二階を息子で区分登記した場合、
父親に相続が発生すると一階部分の床面積比部分だけが居住用宅地の対象となります(措法69の4、措令40の2、区分所有法第1条)。
 現行は、たとえ区分所有の登記がされていても所定の要件(措通69の4-21)を満たせば敷地全体に特定適用可能の旨の記載があります。
 適用要件緩和といっても、この部分においては厳格化されています。
 実務では、二次相続まで見据えた際の遺産分割シミュレーションやこれから新たに二世帯住宅を建築するお客様についてアドバイスする際に気を付けなければいけません。
 現在の情報だけからすると、区分所有登記して親子が別々に所有もしくは相続するのは得策ではなく、建物部分は「共有」での登記が無難ではないでしょうか。「共有」ですから、父親が遺言を残しておくことも必要かもしれません。

 

■未成年者及び障害者控除の拡大 【平成27年1月1日以降適用】

未成年者及び障害者が相続人の場合の税額控除額が拡大されます。

未成年者控除 障害者控除
現行 改正案 現行 改正案
20歳までの
1年につき6万円
20歳までの
1年につき10万円
85歳までの
1年につき6万円
(特別障害者については12万円)
85歳までの
1年につき10万円
(特別障害者については20万円)

 

■相続時精算課税制度の適用要件の見直し 【平成27年1月1日より適用】

①受贈者の範囲に20歳以上である孫(現行推定相続人のみ)を追加する

②贈与者の年齢要件を60歳以上(現行65歳以上)に引き下げる

 

■教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税規定の創設

【平成25年4月1日から平成27年12月31日まで適用】

30歳未満の者の教育資金に充てるためにその直系尊属が金銭等を拠出し、金融機関(信託会社(信託銀行を含む))、銀行及び金融商品取引業者等に信託等をした場合には、信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1,500万円(学校等以外の者に支払われる金銭については、500万円を限度とする)までの金額に相当する部分の価額については、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととする。

※教育資金とは、文部科学大臣が定める次の金銭をいう

  1. 学校等に支払われる入学金その他の金銭
  2. 学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの

 

■注意!

  • このページは、2013年9月1日に作成しています。
  • 記載内容に誤りがあっても当方では責任を負いかねます。
  • 内容の確認はお近くの税務署又は税理士にご相談ください。