白色申告と記帳・帳簿等の保存

現行制度

 現行制度における白色申告をする個人の方に対する記帳・保存義務としては、前年あるいは前々年の事業所得等の所得金額の合計額が300万円を超える個人事業所得者等に限定されていました。

新制度(平成26年1月以降)

 事業所得・不動産所得・山林所得を生ずべき業務を行う全ての方に、記帳・帳簿等の保存が必要となります。
 また、所得税の申告が必要ない場合であっても、記帳・帳簿等の保存制度の対象となります。

記帳

 売上などの総収入金額と、仕入その他必要経費に関する事項を記録として残すことを言い、記帳にあたっては、取引年月日、相手方の名称、金額等を記録していきます。
 小売業など、現金売上が大量に発生する場合には、1つ1つの取引ごとではなく、日々の合計金額のみをまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよいことになっていますが、記帳は、所得金額が正確に計算できるように、整然とかつ明瞭にする必要があります。

帳簿等の保存

 売上の帳簿、請求書、経費の領収書など、収入金額や必要経費を記載した帳簿のほか、事業の取引に伴って作成した帳簿や受け取った請求書・領収書などの書類を一定期間保管しておくことです。

保存期間

保存が必要なもの 保存期間
帳簿 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) 7年
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) 5年
書類 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 5年
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類

税理士のひとりごと

 この制度改正は、急に決まったものではありません。平成24年度税制改正により、白色申告をする個人の方に対する記帳・帳簿等の保存制度の対象者が拡大されたのです。
 しかし、これにより全ての個人事業所得者等に対して記帳義務が課され、これまで記帳義務等のなかった方については、記帳方法の確認や青色申告を検討することが必要になります。記帳義務がないから“白色”を選択していた方もいらっしゃると思いますが、どうせ記帳しなければならないのなら、“青色”への変更を考えてみてはいかがでしょうか?
 白色申告の「収支内訳書」と異なり、青色申告では、「損益計算書」「貸借対照表」を作成しなければなりませんが、記帳が義務化され、会計ソフトに日々の取引を入力しなければなりませんから、「損益計算書」「貸借対照表」は会計ソフトが作ってくれます。
 また、青色申告には以下のような特典もあります。

  • 最高65万円の特別控除
  • 家族への給与が必要経費になる
  • 減価償却の特例が受けられる
  • 赤字損失分を3年間繰越

申請手続き

 青色申告にしようと決めても、手続きが必要となります。
 まず、最寄の税務署へ「青色申告承認の申請書」を提出しなければなりません。
 家族に給与を支払う場合は「青色申請事業専従者給与に関する届出書」を提出しておきましょう。
 
 また、これらの手続きはいつでもできるのではなく、提出期限がありますので、注意してください。

  • 新規開業の場合
  •   ・1月1日~1月15日までに開業 ⇒ その年の3月15日迄
      ・1月16日以降に開業 ⇒ 開業日から2ヶ月以内

  • 白色申告 から青色に切り替える場合
  •   ・青色申告にする年の3月15日迄

 よく確定申告を作成している途中で、“青色を選択しよう!”と決断し、その方法を問い合わせる方がいます。
 しかし、青色申告をするためには、先に“青色を選択します!”と手を挙げておかねばならないのです。
 平成26年から多くの白色申告の方に記帳・帳簿保存等が必要となります。
 ということは、平成26年の3月17日(15日は土曜日…)までに、平成26年度は“青色を選択しよう!”と宣言してみてはいかがでしょうか?
 宣言したものの、記帳等で悩みがあれば、是非、税理士にご相談ください。
 とはいうものの、年が明けると税理士は忙しくなります。
 税理士へのご相談はお早めに!