一時所得課税の生命保険契約と相続対策

一時所得とは(国税庁HPより)

一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
この所得には、次のようなものがあります。

  1. 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)、競馬や競輪の払戻金
  2. 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
  3. 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。)
  4. 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等

(細かいことは省きますが)上記から、概ね、保険の契約書(保険料の負担者)が保険金受取人となる場合には一時所得として課税されます。
なお、一時所得の金額=総収入金額△収入を得るために支出した金額△特別控除額(最高50万円)となります。

一時所得課税がなぜ相続対策になるのか?

具体的な例をあげて、想定で記載します。

想定の生命保険契約内容

  1. 10年払いの終身保険
  2. 契約者:父(65歳),被保険者:母(60歳),受取人:父
  3. 父の法定相続人は母と子
  4. 死亡保険金:6,600万円
  5. 年払保険料:380万円
  6. 累計保険料:380万円×10年=3,800万円

父が80歳で死亡(母健在)の場合

被保険者の母は健在であるため死亡保険金を受け取る訳ではないため、子がこの保険契約を相続することにより、解約返戻金に対して相続税が課税されます。
そうすると解約返戻金が4,300万円,相続税率15%として645万円(①)の相続税を支払うこととなります。

相続により生命保険契約はどうなるか

  1. 契約者:子,被保険者:母,受取人:子

つまり、一時所得課税の契約形態となるわけです。

母が死亡した場合(二次相続)

一時所得となるので、総収入金額△収入を得るために支出した金額△特別控除額(最高50万円)
→{(死亡保険金△累計保険料)△50万円}÷2=課税所得
※一時所得は、その所得金額の1/2に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額を計算します。
→{(6,600万円△3,800万円)△50万円}÷2=1,375万円
→所得税の最高税率は55%
→仮に最高税率を適用しても、1,375万円×55%≒756万円(②)

子の手取金額は?

死亡保険金6,600万円△相続税額645万円(①)△所得税額756万円(②)=5,199万円
父が負担した累計保険料は3,800万円

結果として・・・

二次相続後には、父が保険料として支払った現金(累計保険料3,800万円)を子に5,199万円にして残すことができます。
キツネにつままれたような話ですが、理論上は生命保険を使うと、財産を増やして子に相続することができる(かもしれない)という一例です。
父や母の年齢、死亡時の年齢、相続財産の額、子の所得金額などによって様々なパターンが考えられるので、あくまでも一例ではありますが、なるべく早いうちに相続対策をする!わからないことは専門家に聞く!というスタンスでいて欲しいと思います。

注意点

あくまで、2016年6月8日時点での話です。
今後変更されるかもしれませんのでお気を付け下さい。
また、保険加入は、くれぐれも自己の責任であることを忘れないでください。
「税理士が〇〇と書いていた!」などと言われても責任をとれませんのであしからず・・・