様々な事情でトラブルを抱え、離婚を考える時、
親族や友人以外でまず相談しようと思うのは
“弁護士さん”だと思います。
離婚“前”に税理士に相談する人はあまりいません。
多くの人は離婚“後”に相談に来ます。
何を相談に来るのかといえば、慰謝料や財産分与などにかかる税金についてです。
そこで、少しだけ“財産分与と税金”について見ておきましょう。
主な財産分与の対象となる財産
- 現金・預金
- 不動産(土地、建物)
- 動産(車や宝石など)
- ゴルフ会員権
- 婚姻費用
- 生命保険金:離婚前に満期がきている生命保険金は、夫婦の共有財産として対象になります。保険料支払い中の場合は、共同財産にはできないというのが判例です
- 職業上の資格:配偶者の協力を得て婚姻中に取得した専門的な職業上の資格は、清算の対象となります
- 営業用の財産:夫婦共同で事業を行っている場合は、財産分与の対象となります
- 退職金:原則として共有財産となり、清算の対象となります
- 年金・恩給:支給の確定している分については、清算の対象となります。離婚時に支給の確定していないものについては、清算の対象とならないとするのが判例です
- 債務(借金):共同生活していく上で生じたものは、財産分与の対象となります。
財産分与の法的性質
財産分与(民法768条)とは、婚姻期間中に夫婦の協力で築いた共有財産を清算することで、法的な性質により、次の4つの要素が含まれます。
- ①清算的財産分与 → 婚姻期間中に夫婦で築いた共有財産の清算
- ②扶養的財産分与 → 離婚後の弱者に対する扶養料
- ③慰謝料的財産分与 → 離婚による精神的損害の賠償
- ④過去の婚姻費用の清算 → 離婚までの婚姻費用(生活費)の清算
財産分与に税金はかかるのか?
上記のように財産分与の法的な性質には、清算的なものと慰謝料に大別されます。
個人から財産をもらっているため贈与税の心配をする人もいますが、
清算的な財産分与はもともと2人の財産であったものを、単に分けることであるため、
原則として贈与税はかかりません。
ただし、離婚による財産分与にも贈与税がかかる場合が以下の2つです(相続税法基本通達9-8)。
- 分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合 → 分与された財産が多すぎる場合、その多すぎた部分に贈与税が課せられます
- 離婚を手段として贈与税若しくは相続税の逋脱を図ると認められる場合 → 税金を逃れるために偽装離婚しても贈与税が課せられます
また、慰謝料とは、家庭内暴力、浮気などで離婚原因を作った方が、
精神的苦痛などを受けた相手方に支払う損害賠償金です。
そして、損害賠償金は贈与税の対象ではなく、所得税の対象になります。
しかし、所得税法上、損害賠償金は非課税となり、相手方からもらっても原則として所得税がかからないことになっています(所得税法9条1項16号,所得税法施行令30条)。
まとめ
財産分与の額が、相当な額であれば、贈与税はかかりません。
ただし、不動産を財産分与した場合、所得税法上は資産の譲渡となり、
物を譲渡した側(支払った側)に譲渡所得税がかかる場合があります。
同じように、株式やゴルフの会員権などを譲渡した場合にも課税されるので注意が必要です。
また、親などに財産分与を肩代わりしてもらうと、
親から贈与を受けたとして贈与税が課せられることもありますから注意してください。
ついでに言うと、不動産を受け取った側に不動産取得税がかかることも忘れないようにしてください。
税理士の目から見ると、財産分与もそれなりに気をつけて欲しい点がありますが、
それはまた次回ということで・・・