教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
これは、25年改正の中でも目玉的なものです。
■ 概要(抜粋)
受贈者(30歳未満の者に限る。)の教育資金に充てるためにその直系尊属が金銭等を拠出し、金融機関(信託会社(信託銀行を含む。)、銀行等及び金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る。)をいう。)に信託等をした場合には、信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1,500万円(学校等以外の者に支払われる金銭については、500万円を限度とする。)までの金額に相当する部分の価額については、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととする。
簡単にまとめると
30歳未満の人が
父母,祖父母,曾祖父母(直系尊属)から
教育資金をもらっても
1,500万円までは
贈与税を課さないということです(非課税拠出枠)。
ちなみに、教育資金も定義されており、
- 学校等に支払われる入学金その他の金銭
- 学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの
とされています。
また、教育に重点が置かれているように見えますが、
おじいちゃん、おばあちゃんが
「1,500万円を孫にあげよう」
というのは
教育費を負担すべき人=自分たちの子
へ1,500万円あげるのと同じです。
2年間に限り特例を設けるので、相続税・贈与税を増税させて欲しいということだと思います。
注意点
特例を受けるためには以下のことに注意してください。
- 教育資金を平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に
金融機関に預けなければならない時限立法である。 - 教育資金の受贈者(もらった人)は、本特例の適用を受けようとする旨等を記載した
「教育資金非課税申告書(仮称)」を金融機関を経由し、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 - キャッシュが必要。xxxの土地を預ける、△△△の上場株式を預けるということはできない。
とりあえず預けておけば得?
贈与税を避けるために、教育資金名目で預けておけばいいと思ってはいけません!
- 受贈者(もらった人)は、払出したお金を教育資金の支払いに充てたことを証明する書類を金融機関に提出
- 金融機関は、提出された書類により払出されたお金が教育資金に充てられたことを確認し、その確認した金額を記録するとともに、この書類及び記録を受贈者(もらった人)が30歳に達した日の翌年3月15日後6年を経過する日まで保存しなければならない
とされています。
それと、とりあえず金融機関に預けていても、受贈者(もらった人)が30歳に達した場合には、この特例は終了することとなります。
預けたお金を使いきれなかったら?
30歳までに、金融機関に預けたお金からから教育資金支出額を控除した残額については、
受贈者が30歳に達した日に贈与があったものとして贈与税がかかります。
不幸にも受贈者が死亡した場合は?
金融機関が、受贈者(もらった人)の死亡を把握した場合は、その旨を記載した調書を税務署長に提出します。
預けた教育資金は、受贈者の相続財産になり、
相続税の対象となります。
税理士の目
税理士として、まず考えるのは、間違いなく相続対策=相続税の節税です。
かなり有効だと思います。ただ、1,500万円をキャッシュで出せる人は、富裕層の人ですから、結果的には「金持ち優遇措置」です。
また、金融機関がボランティアで対応するはずはありません。
各金融機関がこの特例に対応した商品を提供し始めたら、その管理手数料に注意しましょう。
ちなみに、遺言信託などは、管理財産の数パーセントと公正証書遺言に明記しているケースが多いです。
いずれにせよ、子どもがいるご家庭では、少なからず教育費が発生します。
そして、25年改正で相続税の課税対象者が大幅に増える見込みですから、利用しない手はありません。
金融機関の管理手数料も影響してきますが、この特例を検討しても損はないと思います。
■ 参考データ(三井住友信託銀行より)
教育関連費用
文部科学省「平成22年度 子どもの学習費調査」
幼稚園から高校まで(15年間の学費総額)
- 公立の場合:約504万円
- 私立の場合:約1,702万円
独立行政法人日本学生支援機構「平成22年度 学生生活調査結果」
大学(昼間部4年間の学費の支出合計)
- 国立の場合:約263万円
- 公立の場合:約270万円
- 私立の場合:約527万円